1. 糖尿病とは?
糖尿病は、血糖値が慢性的に高くなる疾患です。体内のインスリンが不足したり、インスリンが正常に機能しなくなることで、血糖値のコントロールが難しくなります。糖尿病は放置すると、様々な合併症を引き起こし、健康に深刻な影響を与える可能性があります。
糖尿病の主な種類
- 1型糖尿病:インスリンを分泌する膵臓の細胞が破壊され、インスリンがほとんど出なくなる。主に若年層に多い。
- 2型糖尿病:インスリンの作用が低下し、血糖値が高くなる。中高年に多く、生活習慣が関与している。
- 妊娠糖尿病:妊娠中に発症する一時的な糖尿病で、出産後に改善することが多いが、将来的に糖尿病リスクが高まる。
2. 糖尿病の診断基準
糖尿病は、血糖値やHbA1cなどの指標で診断されます。以下の基準に当てはまる場合、糖尿病の可能性が高いとされます。
診断指標 | 基準値 |
---|---|
空腹時血糖値 | 126 mg/dL以上 |
食後2時間血糖値 | 200 mg/dL以上 |
随時血糖値 | 200 mg/dL以上 |
HbA1c | 6.5%以上 |
これらのうち1つでも基準を満たし、かつ再検査でも同様の結果が出た場合、糖尿病と診断されます。
3. 血糖コントロールの目標
糖尿病の治療の基本は、血糖値の正常範囲内でのコントロールです。これは合併症の予防や進行の遅延に重要です。一般的に以下のような目標が設定されます。
指標 | 目標値 |
---|---|
空腹時血糖値 | 80〜130 mg/dL |
食後血糖値 | 180 mg/dL以下 |
HbA1c | 7.0%未満 |
※個人の健康状態や合併症の有無によって、目標値は異なることがあります。医師と相談しながら設定することが大切です。
4. 糖尿病予備軍と血糖値コントロール
糖尿病予備軍(境界型糖尿病)は、糖尿病には至らないものの、血糖値が正常範囲を超えている状態です。予備軍の段階で対策を講じることで、糖尿病の発症を予防できます。
糖尿病予備軍の基準
- 空腹時血糖値:100〜125 mg/dL
- HbA1c:5.7〜6.4%
予備軍におすすめの生活習慣改善
- 低糖質食:糖質を減らし、食物繊維やタンパク質を多く摂取する。
- 運動:週に3〜5回、30分程度の有酸素運動(ウォーキング、ジョギングなど)。
- 定期検査:血糖値とHbA1cの定期的な確認が重要。
5. 糖尿病の薬物療法
生活習慣の改善だけで血糖値がコントロールできない場合、薬物療法が推奨されます。薬物療法には、経口薬やインスリン注射、GLP-1受容体作動薬などがあります。
経口薬
- メトホルミン:インスリン感受性を高め、肝臓からの糖放出を抑える。
- スルホニル尿素薬(SU薬):膵臓からのインスリン分泌を促進する。
- DPP-4阻害薬:インクレチンの働きを強化し、インスリン分泌を促す。
6. インスリン療法
インスリンは、膵臓から分泌されるホルモンで、血糖値を下げる役割があります。インスリン療法は、自己注射により血糖値をコントロールします。
インスリンの種類
- 速効型インスリン:食事直前に使用し、食後の血糖値上昇を抑える。
- 中間型インスリン:持続時間が長く、基礎的な血糖コントロールに使用。
- 持効型インスリン:1日1回注射で24時間血糖を安定させる。
インスリン療法のポイント
- インスリン療法は、医師の指導のもとで行う必要があります。
- 血糖値の自己測定(SMBG)を行い、効果を確認することが重要です。
7. GLP-1受容体作動薬
GLP-1受容体作動薬は、新しいタイプの糖尿病治療薬で、インスリン分泌を促進し、食欲を抑制する効果があります。
GLP-1の作用
- インスリン分泌の促進:食後に血糖値が上がったときにインスリンの分泌を増やす。
- グルカゴン分泌の抑制:肝臓からの糖放出を抑える。
- 胃の排出速度の遅延:食後の血糖値上昇を抑える。
- 食欲抑制:満腹感を感じやすくし、食事量を減らす効果がある。
GLP-1のメリットとデメリット
- メリット:体重減少効果があり、血糖コントロールの改善が期待できる。
- デメリット:注射薬が主流であり、吐き気などの副作用が見られることがある。
まとめ
糖尿病は、血糖値のコントロールが難しくなる病気ですが、適切な治療と生活習慣の改善で合併症を予防することが可能です。診断基準を理解し、血糖コントロール目標を設定し、薬物療法やインスリン療法、GLP-1などの治療法を取り入れることが重要です。医師と相談しながら、自分に合った治療計画を立て、定期的な検査を行うよう心がけましょう。